【再びバンコクへ】
初めてタイを訪れたのは2000年3月。学生時代の友人達とであった。それからもうすでに20年以上の月日が流れている。当時、バンコク市内を通るBTS(バンコク・スカイトレイン)は部分開業、あちらこちらでドタバタと建設工事が行われていたことを覚えている。
これこそがアジアの勢い、10年後、20年後、どうなるのかとワクワクとしたものだ。その魅力に引き寄せられるかのように、同年の9月にはマレー鉄道に乗るためバンコクを訪れていた。
それから結婚、子供が産まれと時間が過ぎ、次にバンコクを訪れたのは17年後の2017年10月であった。その時は日本からの直行便がないラオス・ルアンパバーンを訪れるため、前泊と後泊で滞在した。
その時の印象は、発展したバンコクを見ても記憶がつながらないばかりか、初めて訪れた街のような感覚であった。トランジット入国だったので街自体を楽しんだ感覚はない。訪れた回数に比べて知らないことが多く、街自体を捉えきれない感覚をずっと引きずっていた。
コロナ禍が開けつつある今、5年振りに再びバンコクを訪れ、どんな街なのか心身馴染ませるように街をしっかり歩き、暮らすように旅をしようではないか。
【出発】
コロナの影響を受け、関西国際空港行きの直行リムジンバスはまだ運休したまま。電車で大阪市内経由して空港に向かう必要があった。搭乗するタイ・エアアジア XJ613便の出発時間は9時50分、コロナ禍、念のためにも7時半過ぎには関空に着いておきたい。
早朝、電車内の通勤客から大きいキャリーケースに視線が集まる。その通り、残念ながら私はサイドFIRE民、サラリーマンではないのだ。乗換えのため連絡路を足早に南海電鉄・難波駅へ向かう。この辺りからごろごろとキャリーケースを転がす人たちを見かけた。
午前7時半前、関西空港駅に到着。旅客ターミナルの3Fの国際線出発カウンターへと向かう。そこで待ち受けたのがエアアジア名物の大行列。前もってウエッブでチェックインを済ませておいたが、チェックイン、セキュリティチェック、出国審査後のカードラウンジを楽しむ時間はなかった。
行列に並ぶことおよそ50分。チケット発券システムがダウンし、発券と手荷物預かりを手作業で行っていた。そこにはプリントアウトした乗客リストからハサミで切り貼り付した搭乗券が用意されており、座席番号が手書きで記入されていた。グランドスタッフさん、夜なべして搭乗券作りをしていたのだろうか? まったくご苦労なことである。
ようやくチェックイン、手荷物の預け入れも無事完了。しかし、後ろにはまだ長い行列。これでほんとに定刻に出発できるだろうか? すでにタイ・タイムではないか?
セキュリティチェックを終え、出国審査場へ。日本のパスポート保持者であれば、顔認証のみで出国可能とのこと。だが、パスポートには出国スタンプが欲しいものだ。先週手に入れたばかりの人生4冊目のパスポート。審査官より記念すべき出国スタンプを押してもらったのだった。
【タイ・エアアジアX XJ613便】
搭乗開始時間は過ぎているが、チケットカンターでの大行列ためか、なかなか乗客は集まらない。機材はエアバスのA330-343 (機体記号 HS-XTI)。レガシー系の航空会社のA330であれば 2-4-2の8席の座席配列であるが、このA330は 3-3-3 の9席と狭い。シートのリクライニングは可能であるが、デフォルト位置では体を起こしたような状態となり、快適なシートと言うにはほど遠い。LCC、当然である。
結局1時間ほど遅れての出発となった。日本語のアナウンスは録音の音声案内のみで、出発遅れを知らせる日本語でのアナウンスはない。英語は訛りが強く、時間を聞き取ることができない。タイ語は「さわでぃーかー」と「こっぷんかー」くらいしか聞き取れないので仕方がない。
なかなか始まらない機内食のサービス。出発から3時間ほど経っただろうか、ようやくサービスが始まった。日本時間の午後2時頃、空腹に耐えかね関空の自動販売機で買った菓子パンを齧っていた。
LCCでは予約購入した乗客に座席番号と名前を確認しながら機内食が配布される。追加の食事、ドリンク、ビール、ワイン等はもちろん有料。残念ながらシンハー (SINGHA) は品切れとのこと、チャーン (Chang) を購入。150バーツ也(約600円)。高い。さっそく弱くなった日本円の安さを食らう。受取りはバーツ、円、米ドルの現金のみ。5年前の訪タイ時に使い残したバーツで支払う。バンコク市内のセブンだったら41バーツである。だが、乾燥したこの機内で喉を潤しながら、機内食とともに味わうことに生きがいを感じるのだ。
決して頼んだ訳ではないが、しっかりと氷がカップに入っている。「そうそう、これこれ」と頷く。所変われば品変わるである。暑い地ではビールはすぐにぬるくなってしまう。
国際線に乗れば有料であっても機内食が食べたい。メニューの名はローストチキンブラックペッパーソース添え、お味は見た目より美味しいと感じるレベル。
【スワンナプーム国際空港 (BKK)】
1時間ほど遅延し、タイ現地時間の午後3時頃にスワンナプーム国際空港 (Suvarnabhumi International Airport) に到着。実はスワンナプームに到着するのは初めてなのである。その開港は2006年。5年前の訪タイ時もタイ・エアアジアXを利用したが、その時はドンムアン国際空港 (Don Mueang International Airport) であった。
私見ながらタイ・バンコクの空港と言えばドンムアンの印象が強い。出発口の自動ドアが開くとすぐにチェックインカウンターがあり、列に並ぶ多くの乗客がドアからはみ出すように順番を待つ光景である。その後に国内線専用になったり、第2ターミナルが新設されたり、乗入れる航空会社の入れ替わったりと多くの変遷を経て、現在の国内・国際線のLCC専用空港となっている。
入国審査の待ち時間は30分程度、マスク着用なしのヨーロッパ、北米からの旅行者ともに行列に並ぶ。コロナ前の国際線の賑わいが戻りつつあると感じる。スタッフ不足でなかなかで出てこない預け入れ荷物をようやくピックアップした。
次はタイバーツへの両替である。両替レートは滞在中の物価の換算基準となるので、わずかなレートの違いがあっても重要である。空港内の両替商は横並びの協定レートなのだろうか? 1万円を差し出して 2,265バーツと非常にレートが悪い。
ネットで情報を集めたところ、エアポートレールリンク (ARL, Airport Rail Link) のスワンナプーム空港駅、改札口の左奥にある両替商が良いレートを出していることがわかった。到着フロア(2階)からB階(地下1階)までエスカレーターで移動。その中でも横に並んだ3つの両替商 (Super Rich(橙色), Kasikorn Bank(緑色), Happy Rich(黄色)) からレート良い Happy Rich を選んだ。
1万円を差し出して2,565バーツ。1バーツがなんとか4円を上回らないレート。弱い日本円 2万円、強い米ドル 50ドルをタイバーツに両替、合計 7,025バーツを得る。滞在中は1バーツ = 約4円の換算となる。1バーツが3.0円程度のような時代が懐かしい。我が2万円と50USドルはタイ王国に献上した。どれだけ楽しめかは自分次第である。
滞在先へはARLを利用し、Ramkhamhaeng(ラムカムヘン)まで移動。30バーツ、所要時間は18分であった。空港からバンコク市内への移動はタクシー、バスであった時代から考えると大きく様変わりしたものだ。
しかし、問題は Ramkhamhaeng 駅から宿泊先までの移動手段。キャリーケースがあるので Bolt か、Grab を利用するつもりであったが、ドライバーが捕まらない。それもそのはず、時はすでに夕方、午後5時を過ぎての通勤渋滞。仕方なく徒歩で、舗装はぼこぼこの高低差あり、途中階段ありの道を20分かけて向かうのだった。
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